10年間、酒を飲まなかった - にぽたん研究所

July 01, 2025

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5年ぶりにブログを書きます。
お久しぶりです。

表題の通り、10年間、酒を飲みませんでした。

アサヒゼロ
アサヒゼロ、美味しいです。まさに #ZEROの衝撃



「2015年7月1日から酒をやめる」と決め、2015年6月30日に「最後の一杯」と心に決めた酒が喉を通り抜けて以来3,653日、今日まで酒を飲んでません。

実は1年超えの禁酒はこれまでも経験済で、今回で3回目。
今回は「一度、10年超えを果たしたい」という目標を掲げ、それを達成出来たのでここに記録を残そうと思った次第です。

もちろん「10年禁酒」なんてものは「ベンチプレス100kg」のように、特別なにか意味のある数字ではなく、ただの指標として設定した数字でしかありません。
10年を待たずして飲んでも、今日飲んでも、この先死ぬまで飲まなくても、それはただ単に2015年に私という人間が気まぐれに立てた目標に対してどういう結果になったかに過ぎません。

元来、自他ともに認める酒好きで、決して酒に弱い人間ではないはずですが、長年の飲酒歴の中で、私自身、
  • 恐らく体質的に酒が合わない
  • 酒癖が決して褒められたものではない
  • 飲むにつれ酒量をコントロール出来なくなってしまう
  • 飲むと人として駄目になってしまう
という残念な特性を持っていて、ここから悟ったのはどう考えても「酒とは距離を置いたほうが賢明」ということでした。


初めての禁酒と敗北




2009年にこのツイートを機に人生初の禁酒を行いました。

ちなみに「ふぁぼ」というのは "favorite" の頭4文字で、"like" に変わった今で言う「いいね」のミーム。
このツイートは当時の数字で「69ふぁぼ」だったと記憶しています。
「万バズ」なんてない黎明期のツイッターにおいては、この「ふぁぼ数」でも「軽くバズった」部類だったように記憶しています。

禁酒と同時期に「キリンフリー」という完全ノンアルコールのビアテイスト飲料が麒麟麦酒から発売され、ビール党の私はビールの味が恋しくなった時にかなりキリンフリーに救われていたように記憶しています。
しかし、製造工程で発酵させない (酵母を投入しない) ソレには発酵由来のエステル香がなく、添加された香料でそれっぽく作られた、ビールとは到底似ても似つかない炭酸飲料。コイツを飲む毎日に次第に「ビールではない何かを飲まされている」などといった身勝手な被害妄想さえ抱くほどでした。

キリンフリーを飲みながらみじめな気持ちに苛まれていた2010年春、「アサヒスーパードライエクストラコールド」が登場し

「何だアレ…の…のみたい!!」

と、欲求を抑えることが出来なくなりました。

禁酒1年を達成したその日、


明確に「1年やめる」と決めていたわけではないものの、再び酒を飲み始めるために良い口実が一年だっただけ。
アサヒスーパードライエクストラコールドを飲みたい一心で、禁酒開始時と同様「民意に委ねる」スタイルにして、責任を他者に押し付ける形で飲酒のきっかけを求めていることが透けて見えるツイートをしています。
ただ「それなりの背徳感」に苛まれたせいか、1年禁酒をし続けられたことに対して禁を解くことへのささやかな抵抗からか、自ら「200ふぁぼ」とあえてハードルを上げていることに、どうにも私の意気地なしな一面が垣間見えます。

しかし、このツイートの結果、その規定「ふぁぼ数」にはまったく到達しなかったにもかかわらず、自ら課したその条件は一体何だったんだと言わんばかりに、この2日後の新宿の街には、氷点下まで過冷却されたアサヒスーパードライが注がれたビアグラスを右手に持ち、嬉々としてその内容液を胃に流し込む私の姿がありました。

その喜ぶ姿を動画に撮られ、今はなきFiciaという写真共有サイトに晒されながら、あの日、最初の敗北を味わったのです。


その後の禁酒


2011年には1年7ヶ月、2014年に5ヶ月、2015年に4ヶ月の禁酒をしました。

「禁酒なんて容易に出来る」

これまでの体験からそれは間違いなく言えること。
酒を飲まない生活を始めるのは想像以上に簡単なのです。

ただ今これを過去形で語ってるということは全て敗北という結末に至ったのは言うに及ばず。
「容易に出来る」なんて豪語も説得感なく空虚に響くだけ。
ただ言えるのは、アサヒスーパードライエクストラコールドほどのセンセーショナルな敗北原因などはそこには存在しません。
いま思い返せばかなり昔のことで明確な記憶こそ残っていないものの、多くは「何となく飲みたくなった」などという実に情けない些末な敗北原因ばかりだったように思います。


酒による失敗の記録


2008年にブログ界隈では「酒バトン」なる酒の失敗談を書かせるバトンが流行り、まわってきた形跡がありました。

酒バトン - にぽたん研究所

ここには酒の失敗談として「ダーツで負けてテキーラ一気しまくって路上で寝てクレジットカードで高額決済された」という話が書いてありますが、2011年にこれを上回る被害に遭っています。



今は亡き「LINE BLOG」なるブログサービスで、酒をやめて504日目の私が本事案の詳細について書いていました。

nipotan - 「お酒を断つ」という話 - Powered by LINE (web.archive.org)
飲み会帰りに新宿歌舞伎町のコンビニ ATM で金を下ろし、コンビニから出た時声をかけてきたキャッチについて行った店で睡眠薬を飲まされ、現金 5 万円 (おろしたて) とキャッシュカードから 44 万円不正出金の被害に遭った。
銀行担当者曰く、コンビニ ATM の防犯映像で、自分の背後から外国人女性が暗証番号をショルダーハックしている姿が映っていたそうだ。

「睡眠薬を飲まされた」ことは確定事項ではなく、ただ状況的に「そうとしか思えない」というものですが、最近新宿109 KENZOさんが、私が当時経験した手口にかなり似た犯行を行ってるグループに突撃している動画をアップしています。
場所やプレイヤーの国籍こそ違えど、ほぼまったく同じ手口が未だ横行しているようです。

繁華街でよくお酒を飲まれる方はご注意ください。




そして10年の禁酒へ


飲み会でアルコールの入ってない飲み物を頼んでいると、私が本当は酒を飲めることを知る人から「なんで飲まないの?」と言われたり、グラスに酒を注がれて無理強いされそうになるのが当たり前だった10年前。
あれから今日までの間、私のような「飲めるけどあえて飲まない」という生き方に「ソバーキュリアス」なんて素敵な名前がつき、広く認知されるようになりました。
今では「なんで飲まないの?」などと言われたり、ましてや無理強いされたりはなくなり、飲まない人が生きやすい世の中に変わったように感じます。

その一方で、飲んでいた頃はいつも仲良く誘ってくれた人が、この10年一切誘ってくれなくなったという弊害もあります。
わかります。
私も飲んでいた頃は飲まない人をあまり誘わなかったので。

「飲まないのに誘って付き合わせてしまうのは悪いな」

という思いでそうしていました。

いざ、自分が飲まなくなると、「飲まないのに付き合う」ことと「誘われない」ことを天秤にかければ、前者はきわめて「いつものこと」だから「悪いだなんて思わないで欲しい」と感じます。
一方で後者は「以前は毎回誘ってくれたのに」と傷つき、SNSなどで自分が参加していない飲み会の写真を目にすると「今では "私抜きのいつものメンバー" で飲んでるんだ…」とガチ凹みするパターンもあったりします。

正直、私に限って言えば、これほど酒を飲まない期間が長いともうそれが当たり前すぎて、最早「あぁ…なるほど…そのパターンね…」ぐらいにしか思わず、凹みすらしなくなっています。
なので、あくまで一般論になりますが「誘ったら悪いな」と気を遣ったことがかえって相手を傷つけてしまうこともある…ということを、お酒を飲む方々は心の片隅にでもとどめておかれると良いのかも知れません。

昨今では、酒造メーカーが軒並み「飲まない人との共存」や「適性飲酒」を訴える流れがあり、世間一般の「多様性を受け入れる」という考え方の中には「ソバーキュリアス」「アルコールアレルギー」「下戸」などと「お酒が好きな人たち」がうまく共存する世の中を当たり前にしようとするムーブメントを感じます。

「あの人は飲まないから誘わない」

は、いずれ時代遅れな考え方として非難の的になる時が来るのかも知れません。

もちろんハナから「誘われたくない人」も多くいるので万人に共通するものではありませんが。


ノンアルの時代


かつて私が「キリンフリー」で絶望を味わったあの日から今日までの十余年、ビアテイスト飲料をはじめとするノンアルコール飲料もかなりの種類が発売されています。

私個人の思い出話ですが、2023年に開催された「WEB+DB PRESS 22.9周年パーティ」に参加させていただいた際に、スコットランドのノンアルコール「BRULO」のDDH IPAをいただいたことが、私のソバーキュリアス人生に強いインパクトを与えました。

BRULO
どれもこれも美味しいBRULOは衝撃。そういえばまだヘルを飲んでないな

その後アサヒビールから発売された「アサヒゼロ」により、国産ノンアルにおけるまさしく「#ZEROの衝撃」を味わい、「発酵後にアルコールを抜く」という製法で作られたノンアルコール飲料が増えたことで、本当にビールの味に近いノンアルコールが飲める時代になったと喜びを覚えました。

今や「ノンアル通」を自称しても恥ずかしくない程度に多種多様なノンアルを飲み続ける毎日を過ごしています。

ノンアル
iPhone の「ノンアル」フォルダの中身。これでほんの一部です。私にノンアル語らせたらうるさいですよ?

同時に今や「ベテランの禁酒家」となった私から見ると、今日における「酒を飲まない生き方が」これほどまでイージーモードになろうとは、かつて想像だにしてませんでした。

酒造と税に寛容な諸外国では「発酵してからの脱アルコール」という工程で作られた味わい深いノンアルコールビールの存在はごく当たり前ですが、一方で日本では、発酵を経た (醸造した) ビールから蒸留によって溶媒 (エタノール) を分離させてノンアルコールビールを製造することは、酒税法の関係で「酒税を免れずに製造するのが難しい」とされ、そのせいで日本では「発酵させずに香料でそれっぽく仕立てたノンアルコールビール」が主流となっています。

もちろん、日本の小規模醸造所…いわゆるクラフトブルワリーの中には大手と違いきちんと発酵をさせたり工夫して脱アルコールするなど、本当に美味しいノンアルコールビールを製造しているところも僅かながらに存在はします。しかし流通の問題など、そういう醸造所の努力の賜物にありつける機会はごく稀です。

いわて蔵ビール 禁酒時代のヒール
いわて蔵ビール 禁酒時代のヒール。比較的有名でありつける機会は高い。美味しいです

常陸野ネスト ノンエール
常陸野ネスト ノンエール。こちらも比較的有名で大きめのスーパーなどで買えます。美味しい。

ビールと私


外国の醸造所で醸造したビールに関しては、酒造の過程に関しては日本の酒税法が適用されず、先述の「発酵してからの脱アルコール」が減圧蒸留のプラントをもって容易に行えます。
つまり今の酒税法がある以上は「輸入ノンアルは美味しく、国産ノンアルは美味しくない」という、実に雑で実に残念な括り方でノンアル情勢の実情がほぼほぼ言い表せてしまいます。

Estrella Galicia 0,0
Estrella Galicia 0,0 スペインのノンアル

国産ノンアルが酒税法により発展を妨げられてる実情に絶望を感じた今から一年ほど前の私は

「アルコール発酵しない (マルターゼを含まない) ビール酵母をWHITE LABSで買って個人輸入して自家醸造出来ないか」
「酵母のパウチを活かしたまま常温で空輸出来るのか?」
「空輸できても自家培養しないと継続できないだろう」
「自家醸造の過程で度数が1%以上になると密造酒製造で違法だから途中段階でABVの上昇を検知出来るのか」

…などと、そもそもビール作りの基礎や酵母の培養について全く知らないまったくの門外漢の分際で、突如ノンアルコールビールの醸造に思いを馳せるようになりました。

色々と調べ続ける過程でビールについてやたらと幅広く知識を得て、2024年秋にビア検 (日本ビール検定) の2級を腕試しで受験し、合格しました。

日本ビール検定2級認定証
2024年の日本ビール検定2級の合格率は42.1%

恐らくは「唯一の酒を飲まないビア検2級保持者」です。
実際のところ本当に唯一なのかどうかわかりませんが…。

大麦、ホップ、酵母、製麦、ミリング、糖化、仕込み、ホッピング、発酵、貯酒等の製造工程、ビアスタイル、ビールの歴史等々、ビールについて幅広く詳しくなるほどに、酒をやめる10年前までの自分を思い返し、大手メーカーが作る皆が知ってるあのありふれたラガービールばかりを飲んでいたことや「10年酒を飲まない」という目標を立てたことを何となく悔やんだりしていました。

ビア検2級取得後に、ビールにおけるソムリエ的立ち位置の「ビアテイスター」の資格を取ろうかと考えたこともありましたが「酒を飲まないビアテイスター」とか無理ゲーすぎるな…などと思ったり…。

多種多様なノンアルに目覚め、ノンアルの醸造に思いを馳せ、ビールに詳しくなってしまったことが、考えようによってはある種の敗北であり、結果、目標に縛られて今以上にビールのことを知ることが出来ないというジレンマに陥っていることもまたある種の敗北。

ソバーキュリアスライフを豊かにしようと努力した結果、ノンアルを知れば知るほどに敗北が重なり、敗北を避けて通れない…。
かくも皮肉な状況に喘ぎながら、本日、10年を迎えました。

これからの自分


10年禁酒したのは「ただ単に2015年に私という人間が気まぐれに立てた目標に対してどういう結果になったかに過ぎない」と、結果を軽んじるかの如く先に伏線を張ったように、「絶対に飲まない」というここ10年間の生き方から少しだけルールを開放してもいいんじゃないか?…などと、何となく思っている今日このごろです。

ただし、10年の経験を経て「酒を飲まない生き方が自分には合っている」ことは揺るぎない事実であり、その大前提があるからこそ、これまで設けていた「絶対に飲まない」という「固い禁止条件」を撤廃することがすなわち「日常的に酒を飲む生き方に切り替える」ということにはならないと考えています。

「ソラチエースってどんな風味?」

…これを体験として知らないビア検2級保持者は恐らく「酒を飲まないビア検2級保持者」の私ぐらいではないでしょうか。

取り立てて大した意味はなく、かといって長きにわたって守られたせいで破ることが憚られるこの「固い禁止条件」は、いまの私の知見を広め深めることを阻害し続ける要因になってしまっている。
…そう感じてやまないこの約一年間を過ごしたからこそ、表題の「10年間、酒を飲まなかった」は、このブログエントリーの冒頭部分で漂っていた言葉のニュアンスとはまた少し違った風情を湛えているようには感じられないでしょうか。

「ああ、俺、よく頑張ったよな。もう自分に課した "絶対" ルールは開放してもいいよな…」

達成感と同時に不思議な感情に満たされています。

先に例に上げた「ソラチエース」云々と同様、「この一杯は飲みたい」と思う未体験のビールがいくつかあります。

全国地ビール醸造者協議会の理事であり、私の元上司にあたる山田司朗さんが代表のFar Yeast Brewingのビールを、実は一度も飲んだことがありません。
IT業界からビール屋さんに転身される時「司朗さんのビール飲みたいです!」と軽いノリで表明したものの、その後私は人生二度目の禁酒を開始。 Far Yeast Brewingの前身の当時まだファントムブルワリーだった日本クラフトビールが「馨和」を完成披露し、ご相伴にあずかれる機会が何度となくありながらも自ら立てた「禁止条件」により口にすることはなく、今日に至るまで未だ味わったことがありません。
他にも社名と同じFar Yeastシリーズを含め多くの銘柄がある同社のビールに対し、あの日から未だ果たせぬ「軽いノリの表明」をいつか実現したいと日頃から思っています。

その他にも、重富寛さんがスイングカランで注いだ「一度つぎ」や、山本祥三さんが注いだ「爽快注ぎ」など、有名な「注ぎ手」が注いだビールを講釈込みでグビっと味わってみたい…。

時に「狂ったセブン」みたいな隅から隅までビールな店に行って、「私ビア検2級なんでクラフトビールにもちょっとうるさいんですよね」なんて通ぶった顔して、実はこれまであまり御縁のなかったクラフトビールをジャケ買いし、冷蔵庫で一晩静置させたのち、口の中でじっくりと転がして、私の知る「ビール」の固定観念をぶち壊したくてたまらない。

未だ見ぬ夢がこの先に広がるスタートとして、禁酒10年という日を迎えたと感じています。

最後に


私はこれからも「ソバーキュリアス」であり「ノンアル通」であり続けるとともに、過去の後悔や反省を活かし、ひどく酔うほどには飲むことはせず、でもごくたまには「これはどうしても飲みたい」という一杯を「本当はソバーキュリアスなのに…」と心の中の天使から囁かれて「絶妙な背徳感」に包まれたまま飲み干す…。
そんな生き方をしようかな…。などと考えています。

10年の節目のいま、朧げに思うのでした。


ここまで読んでくださった皆様。
長ったらしい戯言にお付き合いくださってありがとうございます。

キリンの「晴れ風」もない、アサヒの「マルエフ」も復活再販されていない10年前にビールの知見を置き去りにしてきた浦島太郎の私に、良ければあなたのおすすめの一杯を教えてください。






nipotan at 00:00 | Comments(0)
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